繋がる話(66)

ずぶ濡れになっているイモとタカシは自分達でも何が起きたか分かっていなかった

シンジ「お前たちがなぜここにこれる?」

シンジの質問も理解できていないタカシは首をかしげながら

タカシ「いや、イモさんがいきなりバトルじゃー何て言うもんだから負けまいと下の岩を掘り続けてたわけ。なんか楽しくなっちゃって気がついたら削るところ無くなっちゃってさぁ。んで出てきた石全部水の中に入れてたら滑って入っちゃってさ~」

呑気に言っているが、訳もわからん液体の中に身を浸かってそのままここまでくるコイツ神経もおかしいが

やはりどこの部屋も戦いというものがあったのか。

しかし他の部屋のやつらが乱入した場合どうなる?

ふと扉の方を見ると最後のランプが付かないまま開いていた

ムギ「・・予想外の無効試合だな。まぁイモと同等のやつがいたことが本当の予想外だ」

そういってムギは扉の向こう側に足早に消えていった

消えていくムギを追いかけると見覚えのある最初の廊下に躍り出た

繋がる話(65)

シンジはムギから手渡されたレターを受け取った。

 

シンジ「ムギさん、これは何です?」

ムギ「君はこれを持ち続けたまえ。いいかい、破いたり、濡らしたりすると、効果がなくなるよ」

 

シンジは四つ折りのレターを開いたが、それはただのまっさらな紙だった。

 

シンジ「効果って、なんです?」

ムギ「それは持っていれば、わかることだ。今は、言えない」

 

いちいち謎の多いムギの行動にシンジは我慢がならなかった。

 

シンジ「結局、何も教えてくれないんですね」

ムギ「わたしは君に期待をしている。君にしか出来ないことが、この世界には残っている」

 

ムギはそう言うと、シンジから少し距離を取るように後ずさしをした。

 

シンジ「この試合、僕は結果が見えてますけど、続けますか?」

ムギ「途中で棄権することはできないよ」

シンジ「わかりました」

 

シンジは開いたレターをもう一度四つ折りにして、ポケットに閉まい、戦闘態勢に入ろうとしていた。

 

その時、地面からゴォォォーと大きな音が押し寄せてくる感じがした。

 

シンジ「・・・?!」

 

???・???「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

何やら聞き覚えのある2人の声がする。

 

ドゴォォーン!!

 

ムギとシンジの間の地面が大きく割れ、そこからずぶ濡れのイモとタカシが現れた。

 

シンジ「タカシ、お前、生きてたのか?!」

 

ムギは椅子に腰掛けて冷静にその様子を見ていた。

繋がる話(64)

ムギ「ブツブツブツブツ・・・・・」

 

何を呟いているのが気になるがそれを気にしてはいけない

 

このゲームの本質は飲まれたら負けるんだ

 

それをわかっているシンジは自分の作業をする

 

今度はランプのついているドアの側に行き、考えた

 

さっきのムギの話

 

おそらくあいつは勘違いをしている

 

このゲームはどちらかが勝ってはいけないんだ

 

今まではどちらかが勝ちそして何かを奪われ何かを得て

 

今の自分を形成している

 

しかし奪われることに慣れてはいけないし、勝ち続けてもダメなんだ

 

ムギを救いたい

 

その考えだけがシンジの頭を張り巡らせていた

 

ムギ「・・・・」

 

一通り言葉・単語を発し終えたムギはシンジをちらっと見てつぶやいた

 

ムギ「あいつは救世主の一人になるな・・・だからこそ今勝ってはいけない」

 

そういってシンジの方へメモのようなものをもって近づいた

 

繋がる話(63)

ムギ「お前は、一体…」

 

ゲームの仕様をすぐさま理解し、その上、ムギを上回ってくるシンジの能力にムギは震えた。

 

ムギ「君は負けるんだよ。いや、負けなきゃいけないんだ。君は勝ってはいけない」

 

震える足で自分の身体を支えながら、今にも崩れそうなムギはシンジに言う。

 

ムギ「君は何もわかってはいない。ここがどういうところなのか理解すべきなんだ。僕は君より長くここにいる。わかるだろ?」

 

若干の白目と顔面蒼白となっていくムギの顔色は、不思議と、だんだんと老けていくように見えた。

 

シンジ「ムギさん、確かに俺はここに来たばかりで、ここの実情はよくわかってはいない。ただ、負けていい試合なんて俺は聞いたことがない。参加したゲームには勝ちたいと思うのが、普通なんではないのでしょうか」

ムギ「君は、本気なんだね」

シンジ「死ぬのは嫌ですから」

ムギ「そうか。わかった」

 

ムギは口を大きく開いておもいっきり呼吸をして、自分を落ち着かせた。そして、ムギは座り込み、手のひらを地面にかざして、奇怪な言葉を発し始めた。

繋がる話(62)

違う・・・

そういうことではない

まだ理解するのは難しいか?

言葉にしたくとも発してはいけないムギはシンジを睨んだ

ムギ「・・・このままだとお前が負ける」

シンジ「・・・」

ムギの言葉を受け流すようにテーブルの回り、イモ達が運んできたであろう石
色々見て回った

自分の分析が正しければ自分が勝つ

それもムギが思い付かなかった方法で。

テーブルに座ると無言で先程の岩を宝石に変える作業を始めた

トントントトン

トントントトン

シンジの理解できない行動をただ見ているだけのムギは少し怒りを露にして叫んだ

ムギ「何をしている!ゲームははじまっているんだぞ!?お前がこのままそんな訳のわからないことをしていたらっ」

シンジ「理解できないことを発しましたよね?」

シンジはニヤリと笑ってムギを見ながら

シンジ「2ゲーム目早く終わりましたね」

ポーン

奥の扉の上の電球が違う色に点灯した

繋がる話(61)

ムギ「やはり、君はおもしろい。」

シンジ「あいつらも同じように今勝負をしているんですよね。なら、僕たちももう少し続けましょう。」

 

机の上には、古びた茶碗や泥で覆われて茶の色のまな板が無造作に置かれてある。その雑な中に小さめの時計が、まだ止まることなくチクタクと動いている。時計の針は、8を少し過ぎた辺りを指している。

 

シンジ「では、やりましょっか。」

ムギ「シンジくん、気合を入れたくなるのはわかるけど、まだ君がゲームを回すのは早いよ。」

 

ムギはせっかちにもゲームを進行しようとするシンジに向かって愛でるように言った。

 

シンジ「僕はゲームを回そうとはしていませんよ。ただ、勝負に有利になるように、”先に”言葉を発しただけですよ。二回戦目のゲーム、次はあなたの番ですよ」

 

ムギは出し抜けのシンジの行動に、動揺しないよう素振りを見せてはいたが、唇が震えているのがわかるほどうろたえていた。

 

ムギ「君は、何もわかっていないよ」

シンジ「確かに、わかっていないかもしれません。ただ、死ぬのと負けることを選ぶのは、僕の性格的に難しいんですよね」

 

ポケットに手をつっこんで、机の周り観察しつつ、うろつくシンジにムギは恐れたのか声を荒らげた。

 

ムギ「お前、何を考えている。」

シンジ「ムギさん、ゲーム、進めましょ」

繋がる話(60)

ムギ「あるときはポイントの受け渡し。またあるときは今後の絶対的服従。またあるときは相手を心から笑わせる。そして・・・・」

少し言うのをためらった後シンジを睨みながら

ムギ「死ぬことだ」

髪であまり見えなかった目がハッキリと自分を睨んでいると分かった。

本気で足掻いてみろ

そう言っているように思えた

シンジ「この闘い、負けたとしても死ぬことはないと思う。なぜならば、働かせる人手を減らすデメリットが多い。
しかし、勝負というからにはペナルティか、勝者には得点があるはずです。それを聞くことは可能ですか?」

ムギは目を閉じて少しの間考え、少し不気味な笑みを浮かべて

ムギ「わたしたちが無事この部屋から出ることが出来たら教えてあげよう。あと一勝でわたしの勝ちだ」

シンジはムギの言葉の裏の意味が分かったのか、その可能性にかけるため、一度整理した。

ここは知恵の部屋

あいつらも何かしらバトルをしているのか?

さっきまでは謎の宝石のようなものを作っていた。

いきなりNGワードのようなものが出現し、相手に言わせたら勝ちとなる

それをどこのタイミングで分かった?

それとも言わせたら勝ちというゲームの元々のルールが違うのか?


もしかして・・・・

シンジはふと思い浮かんだ

そうか。もしかしたらこういうことか?

シンジはムギを見て笑いながら

シンジ「随分と適当なルールを決めましたね。」

その言葉にムギはニヤリと笑った。

繋がる話(59)

シンジ「ムギさん。一つ聞いてもいいですか?」

ムギ「ふむ」

 

よくわからないゲームの展開になり、シンジは戸惑った。しかし、戸惑いながらも現状を攻略しようとするのがシンジの持ち味だった。殴り書きをした紙をクシャッと手で丸めて、手をグーにしてムギに問うた。

 

シンジ「このゲーム、降りることは出来るんですか?」

 

ムギは何の動揺もなく、部屋の上部を眺めながら答えた。

 

ムギ「降りることは、可能だよ。でもね、そう簡単に降りれるもんでもないのが現実だ。降りれるもんなら、わたしもここにはいないよ」

 

どこか物哀し気な顔をしたムギは上部を眺めていた顎がスッと降りてきたと思うと、殺気を帯びた目つきを一瞬シンジに対して向けた。

 

ムギ「降りるのも、条件が必要なんだ。そして、その条件を満たしても、認められない場合もある。おかしいだろ?でもそれが現実なんだ」

シンジ「そ、その条件は何なんでしょうか」

 

シンジは持ち味の冷静さ若干欠いて、慌てるように答えを催促した。

繋がる話(58)

奥の方に入り口とはまた別のドアが現れた

ポーン・・・・・・

そのドアの上には3つの電球があり、そのうち1つに赤いランプが点灯した

シンジ「・・・?」

ムギ「私の後一勝でおわりだ。シンジよ。考えるんだ」

ムギにそう言われるまでもなく、何となくこのゲームを察し、次の疑問を考えていた

シンジ(NGワードってなんだ?)

頭の中で考えながら今ある現実を受け入れようとしていた

シンジ(NGワードは知らされるのか?それとも見つけるのか?とにかく探りを入れてみるしかない。)

シンジ「ムギさん。あんたはこのゲーム当然初めてではないんだろう。俺を選んだのは勝てやすいからか?」

ムギ「・・・さっきの一件を見て普通のやつは話すのを止めるが、さすがだな思った通りの奴だよ」

シンジ(普通と言った・・・試しに散らばっている紙に殴り書きのように書いてみたが反応しなかった)

ムギ「いいぞ。私にできることはこれくらいだ。理解しろ。ゲームを楽しもうではないか」

繋がる話(57)

ムギ「ここまで勘の良いやつに久々に出会ったわい」

 
ムギは、その場でしゃがみ込み、机の下でバラバラになった光る物体を拾うと、
一つ一つ丁寧に、自分の体全体に染み込ませ始めた。
 
シンジ「ムギさん?何してるんですか…?」
ムギ「お前さんも黙って、俺と同じことをしてみい」
 
ムギはそう言うと、光る物体を頭の先から爪の先まで等間隔に、まるで壊れた細胞を修復するかのように塗りたぐった。
 
シンジ「ムギさん、あなたはここのことをどれくらいご存知なんでしょうか」
ムギ「さぁ、どうしてだい?」
シンジ「だって、こんな奇妙な物体に触るなんて、普通は選択するはずない。しかも、あなたはそれを体に塗りたぐっている。死の危険があるこんなゲームをなぜ続けているんですか?」
 
物体をぬりたぐっていたムギの手が止まる。
 
ムギ「今君は、普通は、といったね?」
シンジ「言いましたけど、それが何か関係あるんでしょうか」
ムギ「まずは、私の一勝だね」
 
ムギはニヤリと笑みをこぼすと、胸からノートらしきものを取り出し、地面に転がっていた細長い石ころでおもむろに何かを書き始めた。
 
◯ シンジくんに、NGワードを言わせた
 
奥の方から、ポンッ、と音がした。
 
 
 

繋がる話(56)

シンジ「俺の出番・・・・?」

出てきたハンマーのような道具を手にして考えた

謎の物体を叩くのか?試しにまとまった謎の塊を叩いてみた

ぐにゅう~~

??

当然のごとく粘土のような物体はハンマーの形に凹んですぐに戻った

シンジ「なんだ?何度やってもなにも変わらない」

何が違うのか・・・・・・

ふと
ムギ言葉と行動を思い出した

・・・・はっ

シンジ「もしかして・・・」

シンジは丸く整えた物体を優しくリズムを整えながら叩いた

トン。トン。トトン

トン。トン。トトン

トン。トン。

・・・ここだ!

リズムを整えた最後に思いきり物体を叩いた

ビシッ゛!!

弾力のあった物質にヒビが入り割れた

うっ・・・・

割れたと同時に光る物が出てきた

ムギ「素晴らしい・・・・」

繋がる話(55)

シンジ「ムギさん、俺らは今、何をしてるのでしょうか」

シンジは卓上の異様に変色した物体を素手ですこねくり回しながら聞いた。

シンジ「ムギさん言いましたよね。君は知恵を使え、って。でも今俺はこの気色の悪い物をただひたすらにクネクネさせてるだけだ。これに何の意味があるというんですか?」

卓上にある物体は下からあがってきたときのその形状ではなく、ムギからの指示によって様々な形となって規則正しく並べられている。シンジはただひたすらにムギからの指示を受け、作業者として務めていた。

ムギ「この作業に特に意味なんてない」
シンジ「じゃあ、なんで…!」
ムギ「それはお前がまだ俺からの指示によって受け側の立場で物をコネってるからだ」
ムギ「お前さんはとても賢い。そして、察しがいい。俺が多少の時間、指示者としてお前さんに“無意味な作業”をやらせていたのも、意図がある。わかるな?」

ムギはそう言うと、奥の部屋から鍵を持ってきた。そして、部屋をある一定のリズムで音を立てながら歩き回った。

トン、トン、トトン。トン、トン、トトン。トン、トン、ト…ガコン!

3回目のリズミカルな音が鳴るのと同時に部屋の片隅から器具らしきものが出てきた。

ムギ「ここからが、お前さんの出番だよ」

繋がる話(54)

コッチコッチコッチコッチ

 

時計の音が鳴り響く・・・・・・

知恵の部屋に入った二人は真ん中にある丸いエレベーターのようなものを見つめていた

 

シンジ「ここから上がってくるって?」 

 

ムギ「まぁ・・・見てれば分かる」

 

そういうと次第にエレベーターが動き出し、何やら紫色の光る物体が沢山乗った皿のようなものが上がってきた

 

シンジ「ムギさん、これはいったい・・・・・・?」

 

机の上に置かれた光り輝く謎の物体を見ながらシンジは言った

 

シンジ「なんか下から上がってきたんですけど」

 

ムギ「あいつらの努力の賜物だ」

 

そう言って光る謎の物体を掬い上げてテーブルの上に置いた

 

ムギ「これはあいつらが掘った土の中に入っていたものだ。これを俺たちが精製するんだ」

 

そういって机に置いた物体を集めて何やら形を整えはじめた

 

 

繋がる話(53)

タカシ「まだ掘るんすかぁ〜?」

 

洞窟の奥のほうからタカシの弱音を吐く声が聞こえてくる。

最初は勢い良く掘っていたタカシだったが、さすがに体力が続かずバテたというところだろう。

 

イモ「お前、ひ弱じゃな〜」

タカシ「逆にイモさん底なしの体力っすね〜!ありえないっすよ!」

 

タカシが岩を椅子に見立てて座って休んでいる間にも、イモはひたすらに穴を掘っていく。

 

タカシ「イモさん、聞いてもいいですかねー?」

イモ「どしたよ?」

タカシ「最初に言ってたじゃないすか、土を水に投げ込んで綺麗な物質を手に入れるんだって」

イモ「うむ」

タカシ「あれって、集めるとくっついたりするんですか?」

イモ「どうしてそんなこと聞くんだ?」

タカシ「いや、なんかどこかで見た覚えがあるんですよね…」

 

タカシは、何か頭に引っ掛かったものを穿り出すようにスコップで土をいじり答えた。

 

イモ「ほぅ。それはどこで見たんだね?」

タカシ「どこでしょう。よくは覚えてはいないんですが、食卓に並んでいたものような感触だけはこの手が覚えているんです…」

 

イモはどこか気まずそうな感じで、タカシには背中を向け、正面を向くことなしに穴を掘り続けた。

繋がる話(52)

イモ「まったく・・・急に落ちたのなんて初めて入った時以来だぞ・・・」

水から上がり息を上げながらタカシに言った

タカシ「いやーすんませんあまりにもよく分からなすぎではしゃいじゃいましたよー・・・で?ここはなに?」

天井にいくつもの穴があいており、全てここの水の中に落ちる仕組みのようだ

イモ「いやぁわしもよくわからんのだがな、ええと、ムギいわく、ここの部屋は最初の行程をやるとかなんとか・・・」

部屋の意味は分かっていないが何度もここには来ているようで

イモ「ほら、向こうに洞窟みたいのがあるじゃろ?そこにこれから行って掘るんじゃ。んで、掘ったのをこの水の中に放り投げる。それをずっと繰り返すのじゃい」

タカシ「何か骨が折れそうっすねぇ~何を掘ってるんすか?」

イモ「わからん。土みたいなんだが、この水の中に入れると土の中に混じってる綺麗な物質がすこしだけ出てくるんじゃよ。それをどうやら次の部屋で使うらしい」

タカシ「綺麗な物質ねぇ・・・宝石みたいなもんすかね?」

イモ「宝石?なんじゃそりゃ。まぁいいタカシよいくぞ!」

笑ながらイモは洞窟に向かった

ふと水の中をみるとキラキラと光る物質で床は埋め尽くされているようだった