繋がる話(33)

「なにしとったんや。自分の仕事ほろり出してから。はよ持ち場に戻れや。」

おっちゃんは、片手に持ってるメガホンを使って僕たちに言う。周囲は機械の音が響き渡り、とても騒々しい。目に見える机の上には、長い布が無造作に置かれていた。その隣には裁縫器具らしきものが複数台置かれている。

「ねぇあんたぁ。いつまでこの子たちに給料払い続ける気なのお?私たちの言うことなに一つ聞かないじゃないの。こんな子らにお金渡すくらいならうちを出入りしてる野良猫にビーフジャーキー入りの缶詰あげたほうがましよお」

女将らしい風格をした女がおっちゃんの陰から現れた。高級な服を身に纏っている様子から、ひと目みてここの上役だとわかった。化粧は荒く、ザリガニの甲羅を唇に擦り付けたような口紅は、人を寄せ付けない人柄であることも理解出来た。

「お前まだあの小汚いのに餌なんか分け与えとったんか?そんなことしとるからいつまでたってもコンロからガスがつかないんやで」
「うるさいわねえ。料理なんてしないんだからガスなんていらないわよ」

女将らしき女は顔を赤らめ関西弁を話すおっさんに嘆いている。ここでは恐らく女将の存在が絶対なのだろう、女将が鼻をムズムズさせてるのを察し、自らのティッシュを渡した。

「そこのシマシマの服着た子はいつまで寝てるつもりなのお?寝て生活費が貰えるなんていい身分になったものね!」
「おい。そこの若いの。おきんかね」

おっさんはシンジの顔を足先でツンツンした。